[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
僕はそのとき、かなりの勢いで街中を疾走していた。
何故そうなったかというと、ある公園で小さな男の子に乱暴を働くヤツがいたんだ。
そのとき怯えて竦んでいる男の子の姿が、いつも僕の夢に現れる少女の姿とかぶってしまった。
だから、助けてやろうという気紛れが働いて、乱暴者を背中から蹴ってしまった。
そこまではよかったんだが、そいつは僕の渾身の蹴りに耐えられるほどに屈強な男だったようで、怒声をあげてこっちに向かってきた。
正直僕は怖かったし、男の子もすぐに逃げていたので、すぐさま逃げることにした。
僕は考えもなく逃げるなんて愚かなことはできないので、そいつを巻くためてにも、人通りの多いところに逃げたのだ。
それからしばらく、男の追いかける姿は見えなかった。振り返って確認もしたから、きっと――
「ふふんッ、僕に追いつけるわけないよ。」
そんなことを口にしたとき。
「危ないッ!」
誰かがそう叫んでいた。
よく思うと、そういえば、さっきからけたたましいクランクションの音が鳴っていた。
「あ…」
自分ながら間抜けな声だったと思う。
きっとお師匠なら、何か言う前に体を動かせと怒鳴っていただろう。
そのとき、いきなり襟首がグイッと後ろにつよくひっぱられた。
気がつくと僕は尻餅をついて倒れていた。体は五体満足だった。
そして――
「大丈夫かい?」
男の声だった。一瞬おいかけてきたヤツかと思って僕は身構えてしまう。
よく考えれば、そんなことはありえないということに何故僕は気がつかなかったのか。
「君、立てる?ほら。」
太陽を背にしているせいか、目の前の男性の姿はよく見えない。荒っぽい方法だったけど、きっと彼が僕を助けてくれたのだろうと、そのときやっと分かった。
僕は顔をあげた。
「だ、大丈夫だ。ありがとう。自分で立てる。」
「――ひ、姫野…かあさん?」
「え?」
聞こえてきた驚愕の声に、僕が反応を返したとき、それは唐突に襲ってきた。
きっと助けられたときに、後頭部を打っていたのだろう。僕の視界は何の脈絡もなく唐突に歪んで、なにやらおかしな笑い声と、おかしな存在を目にしてしまった。
そして僕は、声をあげることなく、驚きと共に暗闇の世界へといざなわれたのだ。
きっとあの声と存在は、街中にいたゴーストだったのかもしれない。
それからのことは夢となる。
その夢もはっきりとは思い出せない。真っ暗闇のなかに、ただ一人の少女がのまれていく姿と、僕がその背に向かって手を伸ばしていることだけが印象的だった。
目を覚ましたあとのことも、実はあまり明確には覚えていない。僕の両親がなにやら心配そうな顔で僕をよく覗き込んできたり、医者らしき男が驚いた顔を見せていたということくらいだ。
で、気がつくとなぜかこの学校にいた。
おそらく僕が明確な意識をもつまえからいたんだろうなと思う。ただそのときに自分に胸があったりして、かなりの違和感に襲われたことがある。自分はこんなヤツだったのだろうかと物凄く焦った。
鏡をみようにも、僕の鏡はなぜか曇っていてはっきりと僕の姿を映さなかった。
――お、女だ。僕は女になっている!?
そのときの絶望感はすばらしいな、いまでも思い出したくないくらいだ。
それからは何度も何度も1人の少女が真っ暗な闇にとらわれる夢を見続けて日々をすごしていた。この学校のことも驚くことなく、僕が平常のものとしたときから、今の僕が始まっている。
さて、僕の目的はこのときにみたという夢である。
1人の少女が闇にとらわれていく夢――、じつはその少女のことは能力に目覚めるきっかけがある前から夢に見ていたんだが、よく思い出せない。
お、思い出せないことばっかりだな、僕は。もう僕は頭がボケてしまったのだろうか。
とにもかくにも、その少女のことが気になってしまった僕は、その少女を自然と探してしまうようになった。
特徴的な外見の子なんだ。そう――、鼻にそばかすがあって、もみあげ部の髪が長いんだ。
そうだ、ひょっとしたらこういうとても素敵な外見をしているのかもしれない。
この学校には色々な姿格好の人がいるので、ひょっとしたらいるんじゃないかと内心期待している。
でも困ったな、いざ本当に見つけたときどう声をかければいんだろうか。
夢のことなんていえないし。
まぁ、そのあたりはこれからじっくりと考えていこうと、僕は思っている。
そういえば、あのとき僕を助けてくれた青年にまだお礼を言ってなかった。いまさらになってふとそんなことを思い出した。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
【注意】
上記のイラストは、使用権は如月狩耶に、著作権はi3にあり、また全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有しています。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
この場を借りて、このイラストの依頼にお答えいただきましたi3絵師様にお礼申し上げます。
このように素敵なイラストを描いていただき、誠にありがとうございます。